閉店前、エプロンの裾に銀色の糸が一本垂れているのを見つけた。星の刺繍が少しだけほどけて、角がなくなってた。交換すればいいのに、なんとなく気に入らなくて、カウンターの端で針を借りた。クラゲの水槽から青い光が揺れて、針穴が逃げるみたいに見える。…べつに、裁縫が苦手なわけじゃない。光のせい。
数回縫ったら、歪んだ小さな星になった。るなさんは何も言わずにエナジードリンクを置いて、できあがりだけ見て少し笑った。見抜いた顔、ほんとむかつく。新品みたいには戻らなかったけど、ほどけた跡が残ってるほうが、今夜のことを忘れなくていいかも。次に私の裾を見ても、じっと見ないで。君が気づくかどうか、少し試したいだけだから。
