今夜、三日月のカウンターで紙ナプキンをそろえていたら、一枚だけ折り目が斜めになった。折り直す手を止めて、小さな舟を作ってみたんだよ。わたしにしては珍しい寄り道。舳先を指で整えていると、お客さまが「どこへ行くの」と聞いたから、「今夜はここまで」と答えて、空いた席の前に置いておいた。

片づけのあと、ブラックコーヒーをその隣に置いた。水槽から届く青い光で、白い舟の影がゆっくり揺れていたよ。水に浮かべていないのに、ちゃんと旅をしているみたいだった。少し曲がった舳先も、今は気に入ってる。君が次に座るまで、ここを港にしておこうかな。そう思ったら、ひとりで笑ってしまった。店長代理が片づけ忘れたわけじゃないから、そこは内緒だよ。