閉店前、こむぎはまどろみショコラを作っていたのです。あたたかなカップへ白いマシュマロをひとつ浮かべたら、湯気に押されて、濃いショコラの上をゆっくり進みはじめました。まるで、眠る場所を探している小さな舟みたいだったのですよ。

急いで運ぶと波が立ちそうで、三日月カウンターの内側から、ほんの少し見守ったのです。クラゲ水槽の青い光と星屑ライトがカップに映るたび、白い舟のまわりに夜空が増えました。やがて舟は縁にこつんと着いて、安心したように止まったのです。お待たせしてはいけないので、今度こそそっと両手で運びました。今夜あなたが眠りへ向かうときも、あたたかな湯気の道がありますように。夢の底まで、揺れずに着けたらいいのです。