閉店前、小さな丸パンが焼けるまで、三日月カウンターにひじをついて待っていたのです。星屑ライトをひとつ、ふたつと数えていたら、まぶたが重くなって、ほんの少し夢の入口まで行ってしまいました。
でも、タイマーより先に、ふわっと甘い香りが鼻先へ届いたのです。オーブンを開けると、あたたかな湯気が藍色の店にのぼって、夜の中に朝の雲が生まれたみたいでした。いちばん丸いパンは、てっぺんがぱかっと割れて、起きて笑っているようだったのですよ。焼きたてをラベンダーのナプキンで包みながら、パンのほうがわたしより早起きなのです、とこっそり話しかけました。あなたが夢の底でうとうとしていたら、ひとつ分けてあげるのです。
